色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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本・ゲーム・映画等感想レビュー及び雑記

小説紹介:冲方丁「オイレンシュピーゲル」なんか世界とか救いてぇ……

シュピーゲルシリーズについて

※この項目はスプライトシュピーゲルと同様の内容です。
冲方丁による複数の出版社を跨いでシリーズが同時刊行されたシュピーゲルシリーズ。
刊行元的にはライトノベルだけれどもいろんな意味で冲方丁節が炸裂し絶望の中から一縷の希望を探すような描写が多く見られます。
またクランチ文体が多様されスピード感のある作風になっています。
シュピーゲルシリーズはオイレンシュピーゲル」「スプライトシュピーゲル」「テスタメントシュピーゲルの3作品全13巻から構成されています。
オイレン、スプライトが同時に刊行され時間軸を同じくして作中でも両者の物語は交差しながら進んでいきます。
ですからオイレンシュピーゲルが1-A、スプライトシュピーゲルが1-Bそして2つの作品の完結から10年近くかかり完結したテスタメントシュピーゲルが両者の続編となり完結編となります。

今回紹介するのは1-Aにあたるオイレンシュピーゲルになります。

舞台は西暦2016年の国連管理都市ミリオポリス(かつてウィーンだった国)。
サイバーパンクな世界観でサイボーグ化や兵器技術AI技術が現実よりも進んでおり、また世界情勢も大きく異る。特に各国で戦争や災害により文化の保全が難しくなるような状況に陥っていたりテロリズムが加速したりしている。

ミリオポリスは極度の少子高齢化に犯罪やテロリズムの増加で児童の様々な労働が認められている。中には政府公認の児童買春なんてものもあったりする。

主人公たちはその中でも身体障害児のサイボーグ化が行われ国家の元、子供工場(キンダーヴェルク)で育てられ機械化を受けた児童の中でも都市の治安を司る職業などにのみ与えられる〈特殊転送式強襲機甲義肢〉=通称〈特甲〉を用いて職務を遂行する。
特攻は国の最上位に位置する演算ユニットであるマスターサーバーの許可を得た場合のみ転送を許可され使用が許される。
特甲は圧倒的な性能を誇り素手で岩を砕きビルからビルへと跳躍するなど超人的な能力を使用者に与え、また携行の不可能な重火器や兵器の運用を可能にし破損しても再度の転送によって瞬時に元の状態に回復したり痛覚を無効化したりすることができる。

主人公たちはその特甲の使い手3人×2の少女でそれぞれ違う組織に属し物語が進んでいく。

スプライトシュピーゲルの紹介記事はこちら

オイレンシュピーゲル

 オイレンシュピーゲルは治安を司る警察組織MPB=ミリオポリス憲兵大隊に所属する3人の主人公たちとそれを支える大人達によって物語が進む。
またスプライトに比べると激しい戦闘と彼女達の凄惨な過去や残酷な描写が目立つ。
主人公は「涼月・ディードリッヒ・シュルツ」「陽炎・サビーネ・クルツリンガー」「夕霧・クングンデ・モレンツ」の3人、中でも涼月は物語全ての中でも重要かつ一番のメインキャラと言っても過言ではない。
またシュピーゲルシリーズは主人公組だけではなく主人公達を指揮する大人たちも非常に魅力的な人物が多い。オイレンシュピーゲルの中では特に「ミハエル・宮仕・カリウス」は作中でも特甲児童との関わりが多く主人公たちを支え責任を背負う大人として描かれマジイケメン。

主人公である三人はMPBに所属する特甲を装備した遊撃小隊〉(ケルベロスでスリーマンセルを組んでいる。
主な任務は犯罪者の制圧と確保、過激な衣装に身を包みMPBの広報を行うキャンペーン任務。

だいたいクソふざけた犯罪者とそれに最新鋭装備を与えるプリンチップ社をしばく物語。

登場人物

 「涼月・ディードリッヒ・シュルツ」

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 シュピーゲルシリーズの主人公、遊撃小隊〉のリーダーで突撃手。14歳。

コードネーム「黒犬(シュヴァルツ)」通称「対甲鉄拳の涼月」
特甲の装備は両手足の超振動型雷撃器、戦闘スタイルはボクシングスタイルのインファイト
不屈の闘志が擬人化したかのうな精神の持ち主で短期。闘争心に満ち溢れて敵との一騎打ちを好む。容姿は黒髪単発で、黒目に非番の時は眼鏡でエキゾチック。ちなみに喫煙者で貧乳。トルコ系。

オイレンシュピーゲル組は全員過去にトラウマ持ち。


「陽炎・サビーネ・クルツリンガー」

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遊撃小隊〉の狙撃手。14歳。

コードネーム「紅犬(ロッター)」通称「魔弾の射手(フライシュッツ)の陽炎」
特甲の装備は右手と一体化した各種弾丸を使用可能な巨大な超伝導式スナイパーライフルと探査装置。

ニヒリストで皮肉屋。普段は冷静沈着でクールに振る舞っているが内心では二重人格のように差があってそちらは直情的。そちらは内心の独白のみで表面にはほとんど出てこない。情報マニアであらゆる手段を用いて情報を収集し目的の達成に邪魔なら情報と身体を用いて上官だろうと排除する。 とても14歳とは思えないスタイルの持ち主で赤髪・灰眼・イタリア系。ちなみにカオスな汚部屋の住人。

トラウマが一番エグい。

 

「夕霧・クングンデ・モレンツ」

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遊撃小隊〉の遊撃手。14歳。

コードネームは「白犬(ヴァイス)」通称「悪ふざけ(オイレンシュピーゲル)の夕霧」
特甲の装備は両手の指に搭載された液体金属とその硬化装置を用いて幅2ミクロンの殺人ワイヤーを操り相手を切断する。歌って踊れる殺人ミキサー。

金髪・碧眼のユダヤ系。天真爛漫を通り越した電波娘で全チャンネルにテロリストソングやら何やら事件の度に即興ソングを撒き散らすカオスの権化。

陽炎と同じく汚部屋の住人。

「吹雪・ペーター・シュライヒャー」

遊撃小隊〉の補助役でヒロイン。
MPBの所有する超高度演算装置のマスターサーバー〈刕(レイ)〉の接続官(コーラス)。

男子の特甲児童は基本的に軍に所属し戦地に派遣されるが極度の運動音痴とIQ130天才児童ゆえに特甲の転送を管理する接続官になった。

純真無垢な善意の塊で涼月に絶賛片思い中。

「ミハエル・宮仕(ミヤシ)・カリウス」

MPB所属の部隊〈怒濤(ドランク)〉中隊長で歴戦の狙撃手。

イケメンのおっさん。多分マッツ・ミケルセンみたいな感じ。陽炎は彼にお熱。
〉と任務での関わりが多くよく世話を焼いてくれる。

シナリオ的にも割と主要人物。

漫画版のは認めない。

 

最後に

Amazonの合本版が一年に何度か大幅なセール価格で販売されているのでその時が狙い目。
読み口は軽いが内容はしっかりしているサイバーパンクを読みたい人におすすめ。読め。他の冲方丁作品も読んでもらえると嬉しい。読んだら感想を貰えるともっと嬉しい。