色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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本・ゲーム・映画等感想レビュー及び雑記

小説紹介:野崎まど「Know」

別に野崎まど週間というわけではないもののここのところ「[映]アムリタ」に始まり最新作の「タイタン」とひたすら野崎まどを読んでいた。

今回の記事の「know」は「タイタン」を読む前に読んでおくと野崎まどのSF感を知る助けになるだろう。何より純粋に面白く興味深い。考えさせられるような作品だ。
それを裏付けるように第34回日本SF大賞の大賞候補作にまで選出されている。

Know

世界観としては情報材という素材が様々な物質に埋め込まれ床や天井、建築物、様々な物が情報を取得しそれを電子葉とよばれる脳へと装着する装置で読み取り高度な情報社会となった世界。

人々は電子葉によって様々な情報を取得する。今知りたいこと、調べたいこと、ありとあらゆる情報が電子葉によって取得できるようになった。
電子葉によって「知っている」という言葉の意味は大きく変わる。勉強して知ったこと、調べることで知ったこと、それらの知識を知っているとしたが電子葉の登場以降は知りたいことを何でも電子葉が即座に検索して教えてくれる。例え聞かれるまで知らなかったとしても聞かれた瞬間にその知識を得ているのだ。
「知っている」という言葉は電子葉により脳と大量のデータベースを繋ぐことに等しかった。

ただし電子葉の装着者には等級が規定された。
生活保護者や非納税者などが受ける等級の1、軽犯罪を起こした者、刑罰を食らった者など一時的に等級を下げられたものである2、普通の市民である者に与えられる3、専門的な知識や技能を修めたものに与えられる4、省庁など一部の情報を扱う存在に与えられる等級5、そして名ばかりの総理大臣に与えられる6だ。

与えられた等級によって取得できる情報は大きく変わる、そして相手から取得される情報もまた変わる。等級が低くなれば低くなるほどより上位の等級の存在から例えプライベートな情報でも取得されてしまう。身体検査の結果、部屋でどうしているか、今どうしているかすらだ。
等級の低い者には情報を守ることもできないのだ。

そんな世界で情報庁の官僚である「御野・連レル」はかつての恩師である「道終・常イチ」に再会し一人の少女を託される。
彼女こそが世界を革新する鍵だと恩師は言う。

だいたいの世界観とあらすじはこんな感じです。

テーマとしては「知る」ということ、「情報」、「格差」などでしょうか?
ディストピアユートピア紙一重のような世界ですが現実的にあり得る未来のヴィジョンだと私は思えました。
宗教的なテーマも含めています。それすらもSF的な内容に昇華している素晴らしい小説です。
考えることはいいことだ。考えさせられる小説は良い小説だ。小説は人生を豊かにする、貴方も小説を読んで人生を豊かにするといい。

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