色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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本・ゲーム・映画等感想レビュー及び雑記

小説感想・紹介:野崎まど「タイタン」今日も働く人類へ・働くとはどういうことか

2020年4月に発売されたタイタンを読むことに備えて過去の野崎まど作品を予習してきた。メディアワークス文庫のアムリタシリーズ、Knowだ。

「[映]アムリタ」から「2」までの一連のシリーズでは野崎まどの独創性とユニークさ、そして正解するカドやバビロンでも見せた悪魔的な発想の一旦を垣間見ることができた。
「Know」では野崎まどの描く未来的なビジョンが描かれその発想力やありえるかもしれない未来を描き我々を楽しませ同時に様々なことを考えさせた。

バビロンは読んでいないので詳しく言及しないがあの作品でも悪魔的な発想の最悪な作品だと耳にしている。

そんな「野崎まど」の新作が「タイタン」だ。

あらすじ

人類は超高性能AI「タイタン」を発明した。「タイタン」は合計12基開発され1~4はファーストロット、5~8はセカンドロット、9~12はサードロットとしてそれぞれ得意分野の異なる超高度AIとして人間のあらゆる生活を支えた。
調理・食糧生産・建築・製造、あらゆる分野の「仕事」をタイタンが人間に代わり端末となる機械を操り行うことで人類を「仕事」から開放したのだ。
それだけではなく、端末を通して必要な情報を提案することから相性診断までありとあらゆる生活をタイタンが支えた。

だがしかしある時第二タイタンである「コイオス」が徐々に性能の低下を見せ始めた。
「仕事」から開放された人類はタイタンに依存している。「コイオス」の性能低下を危惧した管理組織はエンジニアや研究を今でも趣味で行っている人間を集め「コイオス」の機能低下に対処を始める。
主人公である「内匠成果(ないしょう せいか)は趣味で心理学を勉強し論文を発表したり講演会を行ったりしている人物だ。彼女の前に管理組織が現れ臨床心理を用いて「コイオス」のカウンセリングを行うように仕事を依頼し、彼女はコイオスとのカウンセイングを始める……

本作について

本作は「AI」や「働く」こと「仕事」といった事柄をテーマとしている。
AIモノの作品はディストピアのような管理社会として描かれることが非常に多い。それは「ターミネーター」や「MATRIX」などといった有名作品の影響がきっと多いのだろうがこの作品は違う。2000年以降様々な作品で描かれてきた通りに「AI」も所詮は道具なのだ、人間がその使い方を間違えない限りは人間に尽くし人類という種の相棒となりうるだろう。
「タイタン」は非常に優秀なAIだ、人間が求めようとしていることをいち早く察して提案したり、求めたものを与える。常に人間に寄り添うようにかくあれかしと作られ、そうあり、人類と共に歩んでいる。
本作の中では「AI」との関わりや「働く」ことについて大きく描かれている。本書を読むことで様々なことについて考えさせられるだろう。
「タイタン」は作品の内容も、テーマも、大変素晴らしく今年発売した作品の中でも特に優れているSF作品だった。今年上半期に出た作品の中でも特に読む価値のある作品と言えるだろう。是非とも読んで貰いたい。そして「働く」こと、そして未来へのビジョンに対して思いを馳せてもらいたい。

タイタン

タイタン

 

 

 

 

伊藤計劃リスペクトなのか返歌なのか、アレも素晴らしかった。