色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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本・ゲーム・映画等感想レビュー及び雑記

ゲーム感想・レビュー「ゴースト・オブ・ツシマ」武士の誉と蒙古と冥人の業

ソニー傘下のゲームスタジオ「Sucker Punch Productions」から待望の作品が発売された。
「ゴーストオブツシマ」だ。私は発売日にパッケージ版を購入し約1週間でトロコンまで辿りつけた。おおよそ50時間もあれば寄り道をしながらでもクリア自体は可能だろう。

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2017年に発表され注目を集めた海外のゲームスタジオ開発の日本の対馬を舞台としたオープンワールドアクション作品で元寇により襲来し島を占領した蒙古に武士が戦う作品で発表から随分と長い時間音沙汰も無く多くのゲーマーをやきもきとさせていた。
そんな作品が2020/07/17にようやく発売された。
オープンワールドのアクション作品は多くとも日本を舞台とした作品はほとんど知らない。私の知る限りではこのゴーストオブツシマただ一つだ。

ゴーストオブツシマは先述したように九州の北に位置する対馬を舞台とした作品だ。
鎌倉時代に起きた蒙古の襲来、つまり元寇をメインのシナリオとして扱っている。
簡単に説明すると蒙古スレイヤー。蒙古、死すべし。
作風としてはオープンワールドで今まで発売されてきた様々な作品の素晴らしい要素を纏め上げ、時代背景や舞台の研究もUBIのアサクリ並に行われている。
いくつか記していくと

・SEKIROのような弾きを始め一騎打ちや型などの太刀を使ったチャンバラアクション(チャンバラのような早いアクションが苦手?暗器や弓に暗殺術も有る。使えるものは全て使え)
・アサクリオデッセイ・Far Cryの敵拠点のように自由な手段で攻略できる敵拠点。
・ウィッチャー3のようなウィットに富んだサイドクエストの数々(ただしファンタジー要素は皆無なのでドラゴンのような化物退治などはない)
・アサクリ・トゥームレイダーのような快適なクライミングにロープアクション。

勿論独自的な要素も素晴らしい

・限界まで排除されたUIにより高い没入感。
・ミニマップや目的地へのマーカーを無くしその代わりとしてスライドパッドを使用することによって発生させることができる風を用いた誘導(その際目的地までの距離は出る)
・お狐様によるコンテンツ。付いていくだけで収集要素をこなせる上にお狐様をもっふもふできる。神。
時代考証とは矛盾するもののゲームとしての遊びやすさを優先した結果の武士象などの求められている武士象の提供(鎌倉時代の武士は力が正義の島津のような暴力集団。礼節などはもっと後の時代)
・無駄な謎イケメンなどを設置せずにリアルな対馬を描き出している。
 SEKIROや仁王と比べると色彩豊かで荘厳な背景だ。
・傳承イベントの筆による描写。このムービーは一見の価値がある。
・意味がわからないほど早いロード速度により死亡からの復帰時間を無くしストレス要因を限りなく減らしている。もはやTipsを見せるためにロードの時間をあえて作ったまであるらしい。

他にもいくらでも素晴らしい要素はあるが自身で遊んで確認してもらいたい。
かなり重厚で遊びがいのある作品だった……無論これはちょっと……みたいな点もいくらか散見されるが大した問題ではない。

ただ一つだけ申し上げるならば「誉では飯は食えぬ。民も救えぬ」

メインキャラも「そういうところだからな?」みたいなところもあれどどのキャラもユニークかつブシドーをしている。
特に石川先生と志村殿?お前らのことだからな。

海外の一部では差別がなんとか騒がれたらしいがほとんどの大手レビューサイトでは高得点を叩き出しソニーの新規IPでは新記録となる3日で240万本という化け物のような売上の前には霞んで消える。

【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

  • 発売日: 2020/07/17
  • メディア: Video Game
 

以下スクショ。

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小説感想・紹介:野崎まど「タイタン」今日も働く人類へ・働くとはどういうことか

2020年4月に発売されたタイタンを読むことに備えて過去の野崎まど作品を予習してきた。メディアワークス文庫のアムリタシリーズ、Knowだ。

「[映]アムリタ」から「2」までの一連のシリーズでは野崎まどの独創性とユニークさ、そして正解するカドやバビロンでも見せた悪魔的な発想の一旦を垣間見ることができた。
「Know」では野崎まどの描く未来的なビジョンが描かれその発想力やありえるかもしれない未来を描き我々を楽しませ同時に様々なことを考えさせた。

バビロンは読んでいないので詳しく言及しないがあの作品でも悪魔的な発想の最悪な作品だと耳にしている。

そんな「野崎まど」の新作が「タイタン」だ。

あらすじ

人類は超高性能AI「タイタン」を発明した。「タイタン」は合計12基開発され1~4はファーストロット、5~8はセカンドロット、9~12はサードロットとしてそれぞれ得意分野の異なる超高度AIとして人間のあらゆる生活を支えた。
調理・食糧生産・建築・製造、あらゆる分野の「仕事」をタイタンが人間に代わり端末となる機械を操り行うことで人類を「仕事」から開放したのだ。
それだけではなく、端末を通して必要な情報を提案することから相性診断までありとあらゆる生活をタイタンが支えた。

だがしかしある時第二タイタンである「コイオス」が徐々に性能の低下を見せ始めた。
「仕事」から開放された人類はタイタンに依存している。「コイオス」の性能低下を危惧した管理組織はエンジニアや研究を今でも趣味で行っている人間を集め「コイオス」の機能低下に対処を始める。
主人公である「内匠成果(ないしょう せいか)は趣味で心理学を勉強し論文を発表したり講演会を行ったりしている人物だ。彼女の前に管理組織が現れ臨床心理を用いて「コイオス」のカウンセリングを行うように仕事を依頼し、彼女はコイオスとのカウンセイングを始める……

本作について

本作は「AI」や「働く」こと「仕事」といった事柄をテーマとしている。
AIモノの作品はディストピアのような管理社会として描かれることが非常に多い。それは「ターミネーター」や「MATRIX」などといった有名作品の影響がきっと多いのだろうがこの作品は違う。2000年以降様々な作品で描かれてきた通りに「AI」も所詮は道具なのだ、人間がその使い方を間違えない限りは人間に尽くし人類という種の相棒となりうるだろう。
「タイタン」は非常に優秀なAIだ、人間が求めようとしていることをいち早く察して提案したり、求めたものを与える。常に人間に寄り添うようにかくあれかしと作られ、そうあり、人類と共に歩んでいる。
本作の中では「AI」との関わりや「働く」ことについて大きく描かれている。本書を読むことで様々なことについて考えさせられるだろう。
「タイタン」は作品の内容も、テーマも、大変素晴らしく今年発売した作品の中でも特に優れているSF作品だった。今年上半期に出た作品の中でも特に読む価値のある作品と言えるだろう。是非とも読んで貰いたい。そして「働く」こと、そして未来へのビジョンに対して思いを馳せてもらいたい。

タイタン

タイタン

 

 

 

 

伊藤計劃リスペクトなのか返歌なのか、アレも素晴らしかった。 

小説紹介:野崎まど「Know」

別に野崎まど週間というわけではないもののここのところ「[映]アムリタ」に始まり最新作の「タイタン」とひたすら野崎まどを読んでいた。

今回の記事の「know」は「タイタン」を読む前に読んでおくと野崎まどのSF感を知る助けになるだろう。何より純粋に面白く興味深い。考えさせられるような作品だ。
それを裏付けるように第34回日本SF大賞の大賞候補作にまで選出されている。

Know

世界観としては情報材という素材が様々な物質に埋め込まれ床や天井、建築物、様々な物が情報を取得しそれを電子葉とよばれる脳へと装着する装置で読み取り高度な情報社会となった世界。

人々は電子葉によって様々な情報を取得する。今知りたいこと、調べたいこと、ありとあらゆる情報が電子葉によって取得できるようになった。
電子葉によって「知っている」という言葉の意味は大きく変わる。勉強して知ったこと、調べることで知ったこと、それらの知識を知っているとしたが電子葉の登場以降は知りたいことを何でも電子葉が即座に検索して教えてくれる。例え聞かれるまで知らなかったとしても聞かれた瞬間にその知識を得ているのだ。
「知っている」という言葉は電子葉により脳と大量のデータベースを繋ぐことに等しかった。

ただし電子葉の装着者には等級が規定された。
生活保護者や非納税者などが受ける等級の1、軽犯罪を起こした者、刑罰を食らった者など一時的に等級を下げられたものである2、普通の市民である者に与えられる3、専門的な知識や技能を修めたものに与えられる4、省庁など一部の情報を扱う存在に与えられる等級5、そして名ばかりの総理大臣に与えられる6だ。

与えられた等級によって取得できる情報は大きく変わる、そして相手から取得される情報もまた変わる。等級が低くなれば低くなるほどより上位の等級の存在から例えプライベートな情報でも取得されてしまう。身体検査の結果、部屋でどうしているか、今どうしているかすらだ。
等級の低い者には情報を守ることもできないのだ。

そんな世界で情報庁の官僚である「御野・連レル」はかつての恩師である「道終・常イチ」に再会し一人の少女を託される。
彼女こそが世界を革新する鍵だと恩師は言う。

だいたいの世界観とあらすじはこんな感じです。

テーマとしては「知る」ということ、「情報」、「格差」などでしょうか?
ディストピアユートピア紙一重のような世界ですが現実的にあり得る未来のヴィジョンだと私は思えました。
宗教的なテーマも含めています。それすらもSF的な内容に昇華している素晴らしい小説です。
考えることはいいことだ。考えさせられる小説は良い小説だ。小説は人生を豊かにする、貴方も小説を読んで人生を豊かにするといい。

know

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2020年になってようやくPS4でDark Souls3をプレイした感想

誕生日にフォロワーに対して欲しいものリストでわがままなおねだりをした。
仲のいいフォロワーからカップヌードルのアソートとDark Souls3完全版が届いた。

Dark Soulsというのはフロム・ソフトウェアが開発したソウルシリーズの最終作でゲーム界隈ではソウルライクとまで呼ばれ高難易度で死にゲーのアクションRPGというジャンルを築いた名作だ。

ソウルライクの特徴としては雑魚だろうがボスだろうが敵を侮るとすぐに死ぬ。複数体の敵を相手にしようとすぐに死ぬ。悪質な初見殺しの罠に引っかかればそれもまた死に直結する。スペランカー先生ほどとまではいかないが高所から落ちたり足を滑らせて落ちると即死するような地形も複数存在する。
とにかく命が軽いのだ。その代わりゲームオーバーも基本的には存在しない。死亡したところでチェックポイントに戻されるだけで済む。
ただしデメリットが無いわけではない。Dark Soulsの一作目なら生者の状態から歩く死者に、二作目なら死亡する度に体力の最大値が生者の状態に戻るまで減少を繰り返し最大値の半分まで減少する。三作目にはさしたるデメリットはないがオンライン要素を活用しにくくなる。
そして共通する点としては敵を倒して入手したレベルアップや商品の購入に使用することができる経験値兼所持金であるソウルを死亡した地点に落としてしまうということだ。
苦労して道中の敵を倒しながらマップを探索しソウルを集めても少しの油断が、少しの慢心が死に直結する。主人公の命はとても軽い。だがそれがいい。難しいからこそ挑戦のし甲斐がある。何より高難易度と言っても理不尽という訳ではない。
計算して配置された敵に罠、一見強力で理不尽な攻撃を繰り出してくるボスや中ボス。それらは殺意の塊のように見えるが実はそうではない。すべて綿密に計算された殺意だ。一つ一つの要素に対して冷静に対処していけば対処できない問題じゃないのだ。
複数の敵がいるなら遠距離からの攻撃で釣りだすか範囲の大きい攻撃で纏めて巻き込んで対処すればいい。罠も地形も実地で体験して覚えていけば対処できる。ボスの攻撃は強力だがどの攻撃にもモーションや癖があって冷静に観察すれば回避や防御ができる。
何度死んでもいい、つまりトライアンドエラーをして身体で体験して経験値として蓄積していくことで少しずつでも攻略することができる。
難しいが攻略する手段は用意されているのだ。だからこそ攻略のし甲斐があって、攻略した時のカタルシスも大きい。

私はそんな作品の三作目に挑戦し、トロコンまでした。
非常に困難な道程だった。

正直に告白すると1と2はPS3でプレイ済みで2と3はPCでプレイ済みだ。
同じくフロム製のSEKIROもトロコンまでプレイしてある。だから攻略自体が困難だったわけではない。
記憶力は悪くはない、だから細部はともかくマップやギミック、ボスの行動や対策は覚えている。なので苦手な無名の王以外はさして苦戦することなく処分することが出来た。
攻略よりも苦戦したのはトロコンに必要な魔術・呪術・奇跡・指輪集めだ。
これらの収集要素には実質的なオンライン要素が必要になる。他のプレイヤーの世界への敵対的侵入、侵入してきたプレイヤーに対処する対人要素、それらの誓約アイテム集めという苦行に苦戦したのだ。
3は2017年の発売だ、3年経ってもなおオンラインに籠もって対人要素にのめり込んでいるプレイヤーは概ね対人に慣れていたり狩りになれているプレイヤーだ。そんなプレイヤー達と対峙して尚且勝利しなければいけないのだ、それも90回近く。
大変だった。相手の世界に侵入して倒すのにも相手は一人とは限らない、最大3人を同時に相手しなければいけないかもしれない。無理ゲーか?まあ気合で結局なんとかしたが。

その作業を除けば何度遊んでも楽しめる。ビルドにも幅がかなりある。振るステータスから使う武器、戦闘スタイル、色々と選択肢が多い。
武器の種類も多くそこから派生も数多くある。武器ごとに戦技という専用アクションも設定されている。
私が使用したのは大曲剣のカーサスの大曲刀だ。技量特化用の武器の中でも珍しい重量級の武器だ。

そしてビルドは技量と信仰特化だ。技量武器に雷のエンチャントを行うか雷属性に変質した武器で押し込みながら距離を取る相手には雷の弓という奇跡で追撃していくスタイルだ。回復アイテム以外にも奇跡による回復や状態異常の解除など攻略面や強力プレイに関しては非常に有利に立ち回れる。何より武器に属性を付与することができるエンチャントが強力だ。通常の火力の1.5倍ほど火力が出る。特に両手に持てる双剣のような武器ならば瞬間火力は異常なほど出る。下手なボスなんぞ瞬間的に蒸発するほどだ。
これは対人でも言えることだ。上手く決めることが出来れば瞬殺することもできる。
安定したプレイがしたい人にはおすすめだ。

他のビルドも、特に呪術闇術使いのビルドも試してみたいと思ったが少々疲れた。積みゲーも多いし来月にはゴーストオブツシマが発売する。
だからとりあえずは積みゲーを崩しつつまたしばらく間が空いたらまたプレイすることにした。

理力と信仰に特化した呪術・闇術使い。軽装で高火力で焼き払うような魔術師タイプのビルドはあまり経験がない、非常に楽しみだ。

 

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

  • 発売日: 2018/05/24
  • メディア: Video Game
 
DARK SOULS II SCHOLAR OF THE FIRST SIN - PS4

DARK SOULS II SCHOLAR OF THE FIRST SIN - PS4

  • 発売日: 2015/04/09
  • メディア: Video Game
 
DARK SOULS III THE FIRE FADES EDITION - PS4

DARK SOULS III THE FIRE FADES EDITION - PS4

  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Video Game
 

 

 

 

小説感想「マルドゥック・アノニマス5」ネタバレあり

今まで刊行されたものでもそうだったけれど

バロットの精神が成熟してる(尊い

バロットが自分と似た境遇の子に恵まれない環境から抜け出せるように手を差し伸べたり、正しい道を示したりお姉ちゃんをしていたりマジで尊い

1-3はイースターズオフィスが追い詰められハンターが組織を拡大していく物語だった。
ハンターの圧倒的で着実に勢力を増やしていく驚異とウフコックの苦悩が描かれてきた。
4巻ではバロットの現状やハンターの背景などが描かれ、ウフコックとの再会する例のシーンまで到達した。
正直ここまでシリーズについてきた読者なら泣きそうにもなるよね、アレ。

そして5巻では4巻で描かれたバロットの現状からバロットがウフコックと再会するまで、ハンター=シザースがバロットに反撃れど

 

バロットの精神が成熟してる(尊い

バロットが自分と似た境遇の子に恵まれない環境から抜け出せるように手を差し伸べたり、正しい道を示したりお姉ちゃんをしていたりマジで尊い

 

1-3はイースターズオフィスが追い詰められハンターが組織を拡大していく物語だった。

ハンターの圧倒的で着実に勢力を増やしていく驚異とウフコックの苦悩が描かれてきた。

4巻ではバロットの現状やハンターの背景などが描かれ、ウフコックとの再会する例のシーンまで到達した。

正直ここまでシリーズについてきた読者なら泣きそうにもなるよね、アレ。

そして5巻では4巻で描かれたバロットの現状からバロットがウフコックと再会するまで、ハンター=シザースがバロットに反撃される様やバロットとアビゲイルが家族になっていく様が描かれている。

ベル・ウィングもそうだけれどバロットも彼女の置かれた状況を理解して、彼女の辛さや戸惑いを理解した上で少しずつ距離を縮め心を開かせていく描写はこれ本当にマルドゥック?と思わせるほど癒やされる。これはWeekYuriだね!

導かれる側から導く側へ、守られる側から守られる側へ、バロットは精神も、肉体も、人間として成熟してきた。
彼女の過去であるストリートで育った経験と事件のあとにベル・ウィングと共に得た普通の生活の経験、2つが彼女を立派な人間へと成長させた。
そしてついに、ウフコックを助け出す時点で解ってはいたが、成人した彼女の声が取り戻された。マルドゥック・スクランブル刊行から10年以上、作中では6年、彼女の声がイースターによって取り戻されたんだ。
ウフコックとの再会と共闘も、エイプリルとの家族愛も心に来るものがあったが、やはりこの巻で一番の注目点であり、私達の胸を打つのは彼女が奪われたもの全てを彼女が取り戻したということだ。
5巻ではウフコックを発見する経緯までは描かれなかったモノのそれまでの道筋は既に示された。6巻では闘いの準備を整えた彼女はようやくハンターと直接対峙することになるのだろう。

ハンターサイドはハンターサイドで気味が悪い。
ハンターが、というよりもシザースが、だが。

シザースはどこまで街に食い込んでいるのか、どこまで勢力を広げているのか計り知れないものがある。

それに属しながら対抗を始めたハンターも恐ろしい。
ただでさえ彼の「共感」を与える能力も恐ろしいが、シザースに精神的に対抗できるというだけでさらなる脅威になりえる。
クインテッドがこのまま分裂せずにアンダーグラウンドから表へと勢力を広げてしまった時に三つ巴となってしまうのが一番恐ろしい。どこまで戦火が広がるか想像もつかないからだ。

続きは気になるがやはりまた一年またされることになるだろう。
今までだって待ったんだ、命が来年もあると信じてまた待つことにする。

アノニマスをここまで読んできて思うことはやっぱりスクランブル・ヴェロシティと読んで読者だけが知っている事実が一点にむかって収束していくのはやっぱり気持ちいいものがある。

マルドゥック・アノニマス 5 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-22)
 

 

小説紹介:冲方丁「スプライトシュピーゲル」

 シュピーゲルシリーズについて

※この項目はオイレンシュピーゲルと同様の内容です。
冲方丁による複数の出版社を跨いでシリーズが同時刊行されたシュピーゲルシリーズ。
刊行元的にはライトノベルだけれどもいろんな意味で冲方丁節が炸裂し絶望の中から一縷の希望を探すような描写が多く見られます。
またクランチ文体が多様されスピード感のある作風になっています。
シュピーゲルシリーズはオイレンシュピーゲル」「スプライトシュピーゲル」「テスタメントシュピーゲルの3作品全13巻から構成されています。
オイレン、スプライトが同時に刊行され時間軸を同じくして作中でも両者の物語は交差しながら進んでいきます。
ですからオイレンシュピーゲルが1-A、スプライトシュピーゲルが1-Bそして2つの作品の完結から10年近くかかり完結したテスタメントシュピーゲルが両者の続編となり完結編となります。

今回紹介するのは1-Bにあたるスプライトシュピーゲルになります。

舞台は西暦2016年の国連管理都市ミリオポリス(かつてウィーンだった国)。
サイバーパンクな世界観でサイボーグ化や兵器技術AI技術が現実よりも進んでおり、また世界情勢も大きく異る。特に各国で戦争や災害により文化の保全が難しくなるような状況に陥っていたりテロリズムが加速したりしている。

ミリオポリスは極度の少子高齢化に犯罪やテロリズムの増加で児童の様々な労働が認められている。中には政府公認の児童買春なんてものもあったりする。

主人公たちはその中でも身体障害児のサイボーグ化が行われ国家の元、子供工場(キンダーヴェルク)で育てられ機械化を受けた児童の中でも都市の治安を司る職業などにのみ与えられる〈特殊転送式強襲機甲義肢〉=通称〈特甲〉を用いて職務を遂行する。
特攻は国の最上位に位置する演算ユニットであるマスターサーバーの許可を得た場合のみ転送を許可され使用が許される。
特甲は圧倒的な性能を誇り素手で岩を砕きビルからビルへと跳躍するなど超人的な能力を使用者に与え、また携行の不可能な重火器や兵器の運用を可能にし破損しても再度の転送によって瞬時に元の状態に回復したり痛覚を無効化したりすることができる。

主人公たちはその特甲の使い手3人×2の少女でそれぞれ違う組織に属し物語が進んでいく。

オイレンシュピーゲルの紹介はこちら 


スプライトシュピーゲル

スプライトシュピーゲルは情報操作と要撃による都市の全域警備を目指す独立部隊のMSS=ミリオポリス公安機動隊に所属する特甲児童3人の主人公と教会の神父、それにその弟子とMSSの大人たちによるプリンチップのクソ野郎をしばき倒す物語。

オイレンシュピーゲルと違ってこちらの特甲児童は空を飛べます。特殊空戦機動型(〈燐晶羽(フェデール)〉という装備で羽が生えています。
通常の肉体にない部品を受け入れる副作用として味覚がバグっています。主人公である3人、鳳(アゲハ)・エウリディーチェ・アウスト」は辛さしか感じずコーヒーでもなんでも唐辛子やらタバスコを死ぬほどかけて飲食します。乙(ツバメ)・アリステル・シュナイダーは甘みしか感じず常にロリポップを齧っていて何にでも死ぬほど砂糖をかける。コーヒーが砂糖でじゃりじゃりになってコーヒーか砂糖かどちらかわからないほど入れる。「雛(ヒビナ)・イングリッド・アデナウアー」は酸味しか感じずコーヒーが炭酸になるくらいの酸性を帯びるほどレモン汁を入れる。
オイレンシュピーゲルよりもこっちの作品のほうがもっと大人が大活躍する。主に多脚戦車に乗って敵に突っ込んだり副官のニナはウイルスに感染しながら敵の追跡をしたり単独で敵の指揮官に特攻をかけたりするイケメン女。

主人公達である三人はMSS所属の特甲児童で要撃小隊の妖精(フォイエル・スプライト)〉

登場人物

鳳(アゲハ)・エウリディーチェ・アウスト

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スプライトシュピーゲルのメイン主人公。涼月がシュピーゲルシリーズの表の主人公だとしたら彼女は裏の主人公。

MSS要撃小隊 の妖精(フォイエル・スプライト)〉の小隊長で要撃手。15歳。

コードネーム〈紫火(アメテュスト)〉
特甲の装備は特甲レベル2、つまり特殊空戦機動型(〈燐晶羽(フェデール)〉とバカでかく人間が使用するにはあまりにも長大な12.7ミリ超伝導重機関銃

 上品で強気な優等生、口もよく回る。部下が言葉を聞かないとすぐにキレかけてポシェットから拳銃を取り出そうとする。
外見はお嬢様風のウェーブがかかった紫色の長髪に紫色の瞳。左目には海賊傷。
グラビアアイドルのような豊満なバストを持っているが自身の憧れはモデルのような高身長にスレンダーな体型のため気にしている。指摘するとキレる。

任務ごとにギリシャ神話にまつわる問題を小隊の二人に出すのとおまじないを行い、セオリーには忠実。

子供には甘い。

乙(ツバメ)・アリステル・シュナイダー

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MSS要撃小隊の小隊の迫撃手。

コードネーム〈青火(ザーフィア)〉 

特甲の装備は特甲レベル2、つまり特殊空戦機動型(〈燐晶羽(フェデール)〉と通常の手より異様に長い特甲の両肘から生えた超高熱の灼刃(ヒートブレイド

常に反抗的な態度で目立ちたがりの不良。そしてニヒリスト。MPBの遊撃小隊〉がメディア露出が多いことに憧れて自身もメディアに出たがっているが許可されない。

外見は水色の髪に鋭角的なポニーテール、蒼い瞳。蒼いスカートにニーソ。

胸の中の時計ワニがチクタクと時を刻んでおりその音で任務中に興奮状態になり任務を無視した単独での突撃をかますことがある。

ゲーム好きで装備品として与えられた端末に勝手にゲームをインストールして遊んでいる。ロリポップを常に齧っている。

雛(ヒビナ)・イングリッド・アデナウアー

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 MSS要撃小隊の爆撃手。13歳。

コードネーム〈黄火(トパス)〉

特甲の装備は特甲レベル2、つまり特殊空戦機動型(〈燐晶羽(フェデール)〉と右手には火炎放射器に左手には円筒形のポッドから展開するチェーン・マイン。それに加えて各種爆弾やトラップ、対人兵器。

常に旧型のiPodで音楽をヘッドホンで大音量で聴き人の話を聴かず読唇術を用いて会話をする自己完結娘。内向的な性格で人間不信の塊。
一人称が「ボク」で自身を男の子だと主張するが服装は女の子。

危険な要素があるとそれを「ブンブンなっている」「黄色い」と表現するが基本的には伝わらない。独自の危機察知能力でいつもいち早く危機を察知しているはずがだいたい伝達能力不足で危険な目に合う。

昔見た「ターミネーター」から危険は未来からやってくるという持論を得ており危機に対抗するために小学生の時点で通学バスを爆破した生粋の爆破魔。

 

小説感想・紹介:野崎まど「2」野崎まどのメディアワークス文庫作品集大成

前提作品の記事はこちら

野崎まど

ある日メディアワークス文庫の野崎まど作品新装版がKindleのセールで半額近い値段になっていた。
私は何の迷いもなくそれを購入した。既読作品もあれば未読作品もあった。だが私は一部の作品を読んだだけで読んだつもりになっていたんだ。

この「野崎まど」といういい意味でネジの外れた悪魔のような小説家、そしてそれを認めたトチ狂っているが素晴らしい編集者の思惑にまんまと乗せられていた。

「[映]アムリタ」「舞面真面とお面の女」「死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~」「小説家の作り方」「パーフェクトフレンド」、そして今回の記事で紹介する「2」これらの作品は「[映]アムリタ」から始まって「2」で終わる連作作品だった。「[映]アムリタ」と「2」以外の4作は全て「2」を創るための準備でしかなかったのだ。

私は「2」を読んでようやく理解することができた。
今この記事を読んでいる人達にも今の私のこの感動を、感情を、心の動きを理解して貰いたい。だからもしも野崎まど作品に手を出すのであれば「[映]アムリタ」から始めて間の4作は順番は問わないがそれらを読んでから「2」を読んでもらいたい。
これは強制ではない、ただの「お願い」だ。

あらすじ

数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見る青年。ついに入団試験を乗り越え、劇団の一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物の出現により解散してしまう。彼女は静かに言う。「映画に出ませんか?」と。役者として抜擢された数多は、彼女とたった二人で映画を創るための日々をスタートするが―。果たして彼女の思惑とは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体…?全ての謎を秘めたまま、クラッパーボードの音が鳴る。
【「BOOK」データベースより】

 端的に言ってしまうと「ある人物」というのは「[映]アムリタ」のヒロインである「最原最早」です。これはネタバレでもなんでもなくある程度読み進めれば理解できますし「[映]アムリタ」を読んでいれば予期できるものです。

「2」

 「2」は先述したようにメディアワークス文庫の野崎まど作品の集大成です。
つまり過去作品に登場した重要キャラがほぼ全員登場します。
舞面真面とお面の女」からは主人公の「舞面真面」と「みさき」
「死なない生徒殺人事件」からは「識別組子」と主人公の「伊藤教師」に舞台の「藤凰学院」
「小説家の作り方」からは「紫依代」と「在原露」
「パーフェクトフレンド」からは主人公の「理桜」と「さなか」
これらの作品すべてがこの「2」のために用意された仕掛けでした。4つの作品、4つの物語、4つの要素、全てがこの作品に受け継がれ、そして昇華されています。
4つの作品がこの作品のための作品であり、そして単独でも完成された作品だったのです。こんな大掛かりな仕掛け、思いついたとしても実際に執筆して刊行する作家がどれだけいるでしょうか?それを許可する編集者がどれだけいるでしょうか?まさに悪魔、まさに天才、そういった形容詞が相応しいでしょう。

どの作品もSFではない普通の日常に少し不思議な要素と「思想的なテーマ」を織り込んで書かれた作品でした。
ですがこの作品を読めばそれらがひっくり返ります。この作品によってSFに昇華されるのです。

 正しい意味で全てがひっくり返される。「神が降りてくる」
そんな小説を読みたいのであれば、是非ともこの作品を読むべきだと私は思う。そして私が「2」を読み終えた時の感情を、感動を、そしてその余韻を共有したい。

この記事を読んで少しでも野崎まどに興味が湧いたならば「[映]アムリタ」から始まり「2」で終わる野崎まどのメディアワークス文庫の作品を読んでもらいたい。

もしも読んだのであれば、感想を貰えると私は嬉しい。とても喜ぶだろう。

 ちなみに新装版の表紙は森井しづき先生のイラストになっています。そちらも大変素晴らしく想像力を働かせてくれる素晴らしいものでした。

know

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タイタン

タイタン