色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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本・ゲーム・映画等感想レビュー及び雑記

「すずめの戸締り」先行上映感想 後半ネタバレあり

天気の子に原作ゲームがあったように「すずめの戸締り」にも原作ゲームがあったんだ。私は当時DCを持っていたから覚えている。間違いない……確かにPC版は知らないけれど天気の子の制作が各地の扉を旅をしながら閉めて回るというアクションゲームがあったんだ……君も覚えているはずだ。そうだろう?
きっと君も取り逃がしたアイテムを探して芹澤君のオンボロ車でファストトラベルのように日本中を移動したはずだ。苦労の多い彼は劇場版でも苦労人だった。是非とも彼には移動距離に応じた幸福を手に入れてもらいたいものだ。

与太話はこの辺にしておこう。映画の話だ。映画の話に移ろう。
今作は新海誠の集大成と言っても過言ではない完成度だった。すずめが草太と戸締りをして回るロードムービーとしての一面、2人のただの知り合いから恋愛へと変化していく恋愛モノとしての一面、葬儀が死者ではなく生者が過去から前を向くための儀式であるように未来への成長物語としての一面、色々な要素が複合的に描かれつつもコミカルな描写が多く普段映画を見ない人や子供にもわかりやすい表現に溢れている。
1人で見ても、友達と見ても、恋人と見ても、家族と見ても楽しめること間違いなしだ。
洋画を見ないのであれば今年最後の映画としてこの作品を選ぶ選択肢は多いに「アリ」であろう。

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過去の新海誠映画では魅力的なヒロインは多く描かれてきたが女性が主人公ということは無かった。時代を考慮して、というわけではないだろう。監督が作品を作るにあたってこの構図が一番上手くハマったということだと思う。
すずめは男女どちらから見ても魅力的に見えるキャラクター造形のはずだ。自身の行動を発端とした出来事に責任を感じて誰に頼るでもなく扉を閉めて回る決意をする精神力、それを行動に移す行動力、そして自己犠牲を厭わない心だ。最初は扉を閉めようとしている草太を手伝って死ぬことが怖くないのかと問われても「怖くない」と言い切り扉を締め切る。それはどの扉を閉める時もそうだ。常に危険を伴っているにも関わらずすずめは物怖じせずに挑んでいく。例え足を怪我しようとも進み続ける。イケメンの魂を持っている。旅の途中で制服に着替え直し覚悟完了するシーンなんて完全にイケメンでしかない。
もちろん女性らしさもある。男子高校生のハートを射止めるには十分な魅力を備えている。各地で泊めてもらう代わりにお手伝いをしているシーンではそういった要素が多く見られる。活動的なポニテで元気な姿なりはもとより序盤の坂道を自転車で下っていくシーンの後顔が赤くなっていると指摘されて照れてしまうところとか「Kawaii」かよ。ファッションにバリエーションがあるのもとても良い。どの服装も彼女にとても似合っている。ブーツが似合うのも個人的にポイントが高い。
椅子に座る例のシーンは少年の性癖を歪めてしまうんじゃないかなとか少し思った。

シナリオからキャラデザ、背景、音楽と総じてレベルの高い作品だった。日本を南から北に相当移動していてロケハンも相当大変だったと思う。実際の背景を映像に落とし込む新海誠だからこそより制作の手間も多くなっているはずだ。
個人的には普段映画を見に行かない人にも是非とも見てもらいたい作品だった。見て面白かったら知り合いにも勧めてあげてほしい。

以下ネタバレもといいゲームの与太話

ゲームのネタバレに戻ろう。一周目はほぼ確定で草太が要石となりすずめが扉を諦めて日常に戻り終わる最後まで進むことのできないバットエンドに至ったはずだ。そして草太の代わりにすずめが草太の代わりに要石となって終わるエンディングと時間が間に合わずに地震に巻き込まれて終わるエンディング、この二つのバットエンドに到達した人もたくさんいたはずだ。何せ正規ルートのエンディングに行くには細かい条件が多かった。すずめが覚悟を決めること、過去と向き合うこと、芹澤君の協力を得ること、各地の協力者と良好な関係を築くことetc etc... 映画は正規ルートのみの映画化だ。すずめがパーフェクトコミュニケーションを繰り返す、アクションの判定も完璧にこなしイケメン女子として描かれている。まるでストレスフリーだ。現代版としてリメイクされたすずめは日本のアーロイやララ・クロフトだ。まあ彼らほどデンジャーなアクションはしていないのだけれど……