色のない緑色の考えは曖昧に記述する

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小説感想・紹介:野崎まど「2」野崎まどのメディアワークス文庫作品集大成

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野崎まど

ある日メディアワークス文庫の野崎まど作品新装版がKindleのセールで半額近い値段になっていた。
私は何の迷いもなくそれを購入した。既読作品もあれば未読作品もあった。だが私は一部の作品を読んだだけで読んだつもりになっていたんだ。

この「野崎まど」といういい意味でネジの外れた悪魔のような小説家、そしてそれを認めたトチ狂っているが素晴らしい編集者の思惑にまんまと乗せられていた。

「[映]アムリタ」「舞面真面とお面の女」「死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~」「小説家の作り方」「パーフェクトフレンド」、そして今回の記事で紹介する「2」これらの作品は「[映]アムリタ」から始まって「2」で終わる連作作品だった。「[映]アムリタ」と「2」以外の4作は全て「2」を創るための準備でしかなかったのだ。

私は「2」を読んでようやく理解することができた。
今この記事を読んでいる人達にも今の私のこの感動を、感情を、心の動きを理解して貰いたい。だからもしも野崎まど作品に手を出すのであれば「[映]アムリタ」から始めて間の4作は順番は問わないがそれらを読んでから「2」を読んでもらいたい。
これは強制ではない、ただの「お願い」だ。

あらすじ

数多一人は超有名劇団『パンドラ』の舞台に立つことを夢見る青年。ついに入団試験を乗り越え、劇団の一員となった彼だったが、その矢先に『パンドラ』は、ある人物の出現により解散してしまう。彼女は静かに言う。「映画に出ませんか?」と。役者として抜擢された数多は、彼女とたった二人で映画を創るための日々をスタートするが―。果たして彼女の思惑とは。そして彼女が撮ろうとする映画とは一体…?全ての謎を秘めたまま、クラッパーボードの音が鳴る。
【「BOOK」データベースより】

 端的に言ってしまうと「ある人物」というのは「[映]アムリタ」のヒロインである「最原最早」です。これはネタバレでもなんでもなくある程度読み進めれば理解できますし「[映]アムリタ」を読んでいれば予期できるものです。

「2」

 「2」は先述したようにメディアワークス文庫の野崎まど作品の集大成です。
つまり過去作品に登場した重要キャラがほぼ全員登場します。
舞面真面とお面の女」からは主人公の「舞面真面」と「みさき」
「死なない生徒殺人事件」からは「識別組子」と主人公の「伊藤教師」に舞台の「藤凰学院」
「小説家の作り方」からは「紫依代」と「在原露」
「パーフェクトフレンド」からは主人公の「理桜」と「さなか」
これらの作品すべてがこの「2」のために用意された仕掛けでした。4つの作品、4つの物語、4つの要素、全てがこの作品に受け継がれ、そして昇華されています。
4つの作品がこの作品のための作品であり、そして単独でも完成された作品だったのです。こんな大掛かりな仕掛け、思いついたとしても実際に執筆して刊行する作家がどれだけいるでしょうか?それを許可する編集者がどれだけいるでしょうか?まさに悪魔、まさに天才、そういった形容詞が相応しいでしょう。

どの作品もSFではない普通の日常に少し不思議な要素と「思想的なテーマ」を織り込んで書かれた作品でした。
ですがこの作品を読めばそれらがひっくり返ります。この作品によってSFに昇華されるのです。

 正しい意味で全てがひっくり返される。「神が降りてくる」
そんな小説を読みたいのであれば、是非ともこの作品を読むべきだと私は思う。そして私が「2」を読み終えた時の感情を、感動を、そしてその余韻を共有したい。

この記事を読んで少しでも野崎まどに興味が湧いたならば「[映]アムリタ」から始まり「2」で終わる野崎まどのメディアワークス文庫の作品を読んでもらいたい。

もしも読んだのであれば、感想を貰えると私は嬉しい。とても喜ぶだろう。

 ちなみに新装版の表紙は森井しづき先生のイラストになっています。そちらも大変素晴らしく想像力を働かせてくれる素晴らしいものでした。

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タイタン

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